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スクラッチ向けDDJシリーズのジョグ性能比較

DJプレイでスクラッチを多用したいなら、コントローラーのジョグホイール性能が重要なポイントです。
ジョグの大きさや反応速度、触り心地によって、スクラッチのしやすさや精度が大きく変わります。
Pioneer DJのDDJシリーズには初心者向けからプロ仕様まで様々なモデルがありますが、それぞれジョグの特徴も異なります。
本記事では、「DDJ-REV1」「DDJ-REV7」「DDJ-SB3」「DDJ-400」「DDJ-FLX4」「DDJ-800」といったスクラッチ用途で話題に上るモデルについて、ジョグ性能を比較します。
ジョグのサイズや操作性、重量感、レイアウトの違いからユーザー評価まで項目別に詳しく解説し、「どのモデルのジョグがスクラッチに最適か?」を考えてみましょう。

比較対象モデルの概要

まずは今回取り上げる各モデルの特徴を簡単に押さえておきましょう。

DDJ-REV1

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2022年発売。
エントリークラスながらバトルミキサー+ターンテーブル風のレイアウトを採用し、ヒップホップやスクラッチ練習に特化した2chコントローラーです。
従来モデル(DDJ-SB3等)より約16%大型化された直径154mmのジョグを搭載し、初心者でも本格的なスクラッチ体験ができるよう工夫されています。
まるでミニのバトルセットみたいだ」とジョグの滑り感を絶賛する海外ユーザーの声もあるほどで、低価格(実売3.5万円前後)ながらスクラッチ志向のDJに大人気です。
一方でSerato専用設計(rekordbox非対応)であることや、本体がプラスチック製でやや軽量なためプロ機と比べた耐久性には限界がある点は留意が必要です。

DDJ-REV7

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2022年発売。
DDJシリーズの中でもスクラッチプレイ最重視のフラッグシップといえる2chモデルです。
各デッキに新開発の7インチ(トッププレート径175mm)のモーター駆動ジョグを搭載し、ジョグ自体が回転することでアナログターンテーブルさながらの操作感を実現しています。
ジョグ上面にはアクリル製のビニール風プレートを載せ、本物のレコード盤に触っているかのようなフィーリングです。
また低トルク/高トルクを切替できるスイッチと、ジョグ内部に滑り具合を調整するためのシート(スリップマット)も付属し、ジョグの重さや摩擦感まで自在にカスタマイズ可能となっています。
サイズは大型で重量も約10.7kgと他モデルを圧倒しますが、その分安定感も抜群です。
実際に触れたプロDJの長谷部氏も「ジョグが回っているだけで従来のDJコントローラーとは別次元」と絶賛しており、高価ながら「スクラッチ特化コントローラーの新たな標準」との評価も得ています。

DDJ-SB3

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2018年発売。
初心者向け定番としてヒットしたSerato DJ Lite対応エントリーモデル(2ch)です。
ジョグ直径は約132mmと小型ながらアルミ製トッププレートで適度な質感を持たせ、価格帯の割にジョグの反応も良好と評価されました。
低レイテンシーでしっかり反応するので、初心者の練習用には十分」との声もある通り、基本的なスクラッチであればSB3でもこなせます。
また、本モデル独自の機能として「Pad Scratch」を搭載し、パッドを押すだけでDJ Jazzy Jeff監修のスクラッチパターンを自動再生できる点も話題になりました(※あくまで練習補助的な機能ですが、初心者には嬉しい機能です)。
ただしジョグやピッチフェーダーを含む各操作部はコンパクトゆえに小さく、本格的なスクラッチや細かなピッチ調整には物足りないとの指摘もあります。

DDJ-400

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2018年発売。
SB3と並ぶエントリー機ですが、こちらはrekordbox対応でクラブスタイルを踏襲した2chモデルです。
サイズ・スペック的にもSB3に近く、本体幅や重量はほぼ同等、ジョグ径も約132mmです。レイアウトはクラブ標準に沿ったオーソドックスな配置で、ジョグも静電容量式のシンプルな造りですが、「サイズ以外は上位機種と遜色ない滑らかさ」と評価されるほどジョグの反応性は良好です。
実際、エントリー機ながらクロスフェーダーカーブ調整にも対応し、スクラッチの練習用として十分な性能を備えています。
ただやはりジョグの小ささは否めず、スクラッチの精度面では上位機に軍配が上がります。
各操作部がやや狭く、本格的なスクラッチには物足りない」と感じるユーザーもいるようです。

DDJ-FLX4

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2022年発売。
rekordboxとSeratoの両ソフトに対応したエントリー2chモデルです。
後述のDDJ-400の実質的な後継機で、コンパクトなボディに基本機能を凝縮しています。
特徴は初心者向けのスマート機能(Smart Faderで自動でBPMマッチ、Smart CFXでワンノブ効果)ですが、スクラッチ用途として見るとジョグ径は約11.1cmと小さめで、パドル式(Lever)エフェクトも非搭載のため瞬時のトリックプレイは苦手です。
一応ジョグ操作自体の解像度・反応は悪くなく、前モデルよりジョグが若干大型化・重量化したことで「FLX4の方がスクラッチしやすい」という声もあります。
しかし「ジョグが小さく本格スクラッチには不向き」というレビューが示す通り、本機はどちらかと言えば配信やモバイルDJ向けで、スクラッチをメインにしたプレイにはあまり向いていません。

DDJ-800

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2019年発売。
rekordbox専用の2ch中級モデルで、クラブ標準機に近い操作系を備えつつ持ち運びやすさも両立したハイミドルクラスです。
ジョグホイールは直径約15.3cmとDDJ-400より一回り大きく、中央に楽曲波形などを表示するジョグディスプレイも搭載しています。
造りが頑丈で重量も約4.7kgと適度に重く安定感があり、回転抵抗を調節できる「Feeling Adjust」ノブも装備されているため、自分好みのジョグの重さに設定可能です。
そのためスクラッチや細かなバックキューも思い通りに行いやすく、中・上級者の練習用やサブ機材としても人気があります。
ジョグが大きく精密な操作が可能」「クラブ機器同等の操作感が得られる」と評されるように、エントリー機からのステップアップに最適なモデルです。

以上が各モデルの概要です。それでは次章から、ジョグに関する各項目ごとに詳細な比較を見ていきましょう。

ジョグのサイズ(直径・厚み)

ジョグホイールの物理的なサイズは、スクラッチのしやすさに直結する重要な要素です。
一般に直径が大きいほど手の動きに対する音の変化を細かくコントロールでき、厚みがあったり重量があるほど安定した操作感が得られます。
まずは各モデルのジョグ直径を比較してみましょう。

各モデルのジョグサイズ(直径)を一覧にすると以下の通りです。

コントローラー ジョグホイール直径※ 厚み・構造の特徴
DDJ-REV7 7インチ(約17.5cm) モーター駆動(ターンテーブル型)、本体高さ約82mmと厚め
DDJ-800 約15.3cm 静電容量式、ジョグの重さ調整ノブ付き(Feeling Adjust)
DDJ-REV1 約15.4cm 静電容量式、エントリー機最大級サイズ
DDJ-400 約13.2cm 静電容量式、薄型ジョグ(本体高さ約59mm)
DDJ-SB3 約13.2cm 静電容量式、アルミ製トッププレート採用
DDJ-FLX4 約11.2cm 静電容量式、薄型コンパクト設計(本体高さ約59mm)

※直径はメーカー公称値。
REV7のみジョグ上面のビニール板部分(7インチ)と、プラッター全体(約8インチ)の2層構造。

ご覧のように、もっとも大型のジョグを備えるのはDDJ-REV7です。
7インチ盤相当のビニールプレートが載ったプラッター全体は約20.7cmに達し、コントローラーとしては突出したサイズと言えます。
次いでDDJ-800およびREV1が約15~15.4cmと大きく、エントリー機のDDJ-400/SB3(約13.2cm)より一回り大型化されています。
実際、REV1のジョグは「現在発売されている同クラス機よりさらに大きくなった」ことが売りで、精度の高いスクラッチが可能だとされています。
一方もっとも小さいのはDDJ-FLX4で、約11cm(スマホほど)の直径しかありません。
これは中級機の半分ほどの面積であり、物理的な操作余裕が少ない分どうしてもスクラッチには不利になります。
厚みに関しては、REV7はモーター機構を内蔵するぶん本体ごと厚みがあり重量級(高さ82.4mm/10.7kg)ですが、他のモデルはいずれも本体高さ約58~59mm程度で大差ありません(いわゆる薄型ジョグ)。
ただジョグ側面の高さはREV7が頭ひとつ高く、他はフラットな筐体に埋め込まれた薄い円盤状のジョグという構造です。
総じて、大型ジョグほど手の可動域が広がり精密なスクラッチに有利であり、特にREV7や800/REV1のような15cm超のジョグは扱いやすいと感じるDJが多いでしょう。
逆にFLX4や400/SB3の小径ジョグは高速なスクラッチだと細かな動きのコントロールが難しく、練習次第では対応可能ですが上級者ほど物足りなさを感じる傾向があります。

操作性・反応性(遅延・レスポンス)

ジョグを回したり触ったりした際の反応速度(レスポンス)や遅延の少なさも、スクラッチには欠かせない要素です。
現行のDDJシリーズはいずれもUSB接続のMIDIコントローラーであり、基本的なレスポンス性能は非常に高く作られています。
例えば最廉価のDDJ-400であっても「低レイテンシーでしっかり反応するので初心者の練習用には必要十分」と評価されるほどで、実際ジョグを触った瞬間にソフト側の音がピタッと止まる感覚は上位機種にも劣りません。
そのため通常のUSB有線接続環境であれば、どのモデルでも致命的な遅延を感じることはほぼ無いでしょう。

とはいえ細かく見れば、センサー解像度や内部処理性能の差から、上位モデルの方がより正確・緻密な反応を示す可能性はあります。
エントリーモデルのジョグは構造が簡易なぶんセンサー精度や耐久性で劣る可能性が指摘されており、激しいスクラッチを長期間続けた際の追従性ではプロ機に軍配が上がるかもしれません。
特にモーター駆動のREV7は物理的にプラッターが回転する構造上、よりアナログ的で途切れのない追従性を実現しています。
実機を試したDJからも「ジョグが回っているだけで音に直接触れているかのよう」と評されるほどで、ソフトウェア上の波形を操作している感じがしないほどダイレクトなレスポンスを得られます。
一方、唯一特殊なケースとしてDDJ-FLX4のBluetooth接続があります。
FLX4はPCだけでなくスマホ/タブレットともBluetooth MIDIで接続可能ですが、無線ゆえにわずかな通信遅延が発生します。
Bluetoothはレイテンシーがあり本番では非推奨」との声があるように、シビアなスクラッチプレイ時はUSB有線接続を用いる方が無難です。

総じて、DDJシリーズのジョグ反応性は価格帯を問わず良好であり、初心者~中級者が練習する分にはどのモデルでも遅延によるストレスは感じにくいでしょう。
ただしプロレベルで細かなスクラッチコントロールを要求する場合、上位モデル(特にREV7)の方がセンサー精度や安定性で安心感があるのも事実です。
また、ソフト側の設定(例:スクラッチモードの有無やバッファサイズ)によっても体感レスポンスは左右されるため、各モデルの性能を活かすには適切な環境設定も重要です。

スクラッチのしやすさ(精度・フィーリング)

ここではジョグの使い心地やスクラッチ時のフィーリングについて比較します。
ジョグサイズやレスポンスと重なる部分もありますが、手に伝わる質感やスクラッチの精度といった観点で掘り下げます。

まず精度の面では、ジョグが大きいモデルほど細かなニュアンスまで表現しやすいと言えます。
例えばREV7や800クラスでは、ジョグ一周あたりの物理距離が長いため、小さな手の動きでも微細な音の変化を付けやすく、安定したスクラッチが可能です。
REV7に至っては「7インチモータージョグは12インチターンテーブル相当の回転安定性と操作性を備えている」と公式に謳われており、実際に触れるとアナログレコードでのスクラッチに近い精巧なコントロールができます。
一方で400やSB3、FLX4のような小径ジョグでは、同じ手の動きでも音の変化量が相対的に大きくなるため、精密な加減がやや難しくなります。
エントリー機ユーザーから「ジョグが小さいため本格的なスクラッチには不向き」との声が出るのも、精度面でのハンデを物語っています。

フィーリングの面では、ジョグ表面の素材感や摩擦具合も重要です。
REV7のジョグ上面はアクリル製ながらレコード盤のような細かな溝が刻まれており、指に吸い付くようなグリップ感があります。
さらに付属のスリップシートで摩擦を調整できるため、自分好みの滑り具合にセッティング可能です。
これによりスクラッチ時の手応えを細部までチューニングできる点は、他モデルにはない大きな強みです。
REV1や800のジョグ表面は滑らかなプラスチック/アルミ素材で、適度な抵抗が感じられる質感です。
特にDDJ-800は上位機種譲りの高品質なジョグで、「滑らかな触り心地で精密な操作が可能」と好評でした。
SB3や400もアルミプレート採用でエントリー機なりに質感は悪くなく、「サイズ以外は上位機と遜色ない」という評価もうなずける仕上がりです。
ただし小型機では筐体の軽さもあって、勢いよくスクラッチするとややチープな振動を感じることがあります。
プラスチック筐体の質感にチープさを指摘する声」も一部ある通り、この辺りは価格相応と言えるでしょう。

一方、各モデル固有の工夫もスクラッチのしやすさに影響します。
たとえばREV1には「Scratch Bank」「Tracking Scratch」といったSerato機能を素早く使うためのモードが搭載されており、ホットキューから即スクラッチ音ネタを呼び出したり、クロスフェーダー操作に連動して自動で曲頭に戻る機能(Tracking Scratch)を活用できます。
これらはソフト面のサポート機能ですが、スクラッチ練習の効率を高める有用な仕掛けです。
またSB3のPad Scratch機能も然りで、手本となるスクラッチパターンを模倣できるため初心者の練習補助になります。
DDJ-800やREV7ではジョグ中央のディスプレイに波形や再生位置が表示されるため、視線をPCからジョグに落としてプレイに集中できるメリットがあります。
ジョグディスプレイのおかげで手元で必要情報を把握できてDJがかなりやりやすい」との声もあり、結果的にスクラッチ精度の向上につながるでしょう。
総合すると、ジョグの大きさ・質感・付加機能の充実したモデルほどスクラッチのしやすさで優位に立ちます。
特にREVは別格のフィーリングを備え、ユーザーから「ジョグが大きくスクラッチに十分な余裕がある」「搭載ディスプレイも次元が違う」と称賛され「このコントローラーが新たな標準だ」とまで言われています。
逆にFLX4のようなジョグ径が小さいモデルは、「やれなくはないが練習用途止まり」と割り切った方が良いかもしれません。

重量感(ジョグの回し心地)

ジョグの「重量感」とは、回した時の慣性の強さや手応えの重さを指します。
これはジョグ自体の質量や回転抵抗の調整機能によって変化し、スクラッチの感覚に大きな影響を与えます。

まず圧倒的に重量感があるのはDDJ-REV7のジョグです。
内部にモーターとプラッターを備えた構造上、他のコントローラーとは比べものにならない物理的な重みを感じます。
実際REV7本体は10.7kgもあり(REV5の約2倍)、その多くがジョグ機構によるものです。
REV7ではトルク(モーターの力強さ)をHIGH/LOWで切り替え可能で、HIGHにすれば本格ターンテーブル同様の強い慣性が働き、LOWにすればやや軽めでコントロールしやすくなります。
さらにジョグ内部の2種のスリップシートで摩擦力を調節できるため、「軽くスルスル回る感じ」から「重くどっしりした感じ」まで自在にカスタマイズできるのがREV7最大の特徴です。
これは他のコントローラーにはないメリットで、ユーザーの好みに合わせて最適なジョグの重さを追求できます。
「ジョグの厚さと重量感がちょうど良い」「このバツンとした重厚感が男らしい」という声もあり、従来コントローラーでは味わえなかったずっしりとした手応えが高く評価されています。

他のモデルでは、DDJ-800が唯一ジョグの回転抵抗を可変調整できる点で秀でています。
底面の「Feeling Adjust」ノブを回すことでジョグの重さ・軽さを変えられ、「思い通りのスクラッチ演奏ができる」と好評です。
実際にノブを右に回せば回し心地が重たくなり、素早いスクラッチ時にもブレにくくなります。
逆に左に回して軽くすれば、弱い力でもジョグを回せるので微調整やゆっくりしたスクラッチがしやすくなります。
このアナログ的な重さ調整機能は、上位機種のDDJ-1000などにも搭載されているプロ志向の機能で、DDJ-800が中級機ながら備えているのは魅力と言えるでしょう。

DDJ-REV1や400/SB3、FLX4にはジョグ抵抗の調整機能こそありませんが、モデルごとの重量バランスで回し心地が異なります。
REV1はジョグが大きく重量も2.1kgとエントリー機としては標準ですが、ジョグ自体が大きい分だけ若干慣性が感じられます。
SB3と400、FLX4はいずれも本体約2.1kg前後と軽量で、ジョグの質量も小さいためクルクルと軽快に回せる反面、勢いをつけるとすぐ止まってしまう軽さもあります。
実際、先代モデルと比較して「FLX4の方が一回り大きく重量感もありスクラッチもしやすい。FLX2(前モデル)は小径で軽めだが、その分軽快で扱いやすい利点もある」との指摘もあります。
このように、軽いジョグは初心者には扱いやすい一方で、慣れてくると物足りなく感じることが多いようです。
軽すぎるジョグだと高速の「ベイビースクラッチ」や「チャープ」などで指の力加減がシビアになり、重めのジョグだと力を入れずとも慣性で音を伸ばしやすいという違いがあります。
また、本体が軽いモデルでは激しくスクラッチするとデバイスごと動いてしまうこともあるため、プレイ時に片手で本体を押さえるなどの工夫が必要になる場合があります。
この点、重厚なREV7や適度な重量の800は安定しており、思い切りジョグを動かしてもガタつきにくい安心感があります。

以上をまとめると、ジョグの重量感に関しては「調整機能」と「物理的重さ」の両面で優れるモデルがスクラッチに有利です。
REV7はモーター駆動+高慣性により群を抜いた重量感を誇り、DDJ-800も調整ノブで自在にフィーリングを変えられる点で秀逸です。
REV1はエントリー機ながら大型ジョグゆえの適度な慣性があり、初心者がスクラッチ感覚を掴むには十分でしょう。
逆にFLX4やSB3/400は軽快さ重視のため、重いジョグ特有の安定感は得にくいと言えます。

スタイルへの対応(バトルレイアウト、ジョグ位置)

スクラッチをする際の操作スタイルへの適応度、すなわちコントローラーのレイアウト設計も比較ポイントです。
特に「バトルレイアウト」か否かは大きな違いとなります。

バトルレイアウトとは、ターンテーブリスト(スクラッチDJ)に好まれるターンテーブル+バトルミキサーの配置を模したスタイルです。
具体的には、各デッキのジョグ(またはターンテーブル)が縦置きになり、ピッチフェーダーが通常と90度異なる横向き配置、さらにパフォーマンスパッドや再生ボタン類がジョグの横に位置する構造を指します。
これにより、スクラッチ時にクロスフェーダーやパッドを操作する手の動線が短くなり、ターンテーブルを縦置きにすることで針飛びを防ぐ効果もあると言われます。
今回の比較モデルでは、DDJ-REV1とDDJ-REV7がこのバトルレイアウトを採用しています。
両機ともジョグ上部に横向きのテンポスライダーがあり(REV1は片側60mm幅、REV7はテンポ可変幅50%対応のロングフェーダー)、各デッキの左側(デッキ1側)または右側(デッキ2側)にパフォーマンスパッドやループボタン、PLAY/CUEボタンが配置されています。
中央のミキサー部は2chのバトルミキサーライクな構成で、REV7はMAGVEL FADER PRO、REV1も専用クロスフェーダーを搭載し、いずれもカーブ調整可能でスクラッチしやすい設定にできます。
さらにLever FX(パドル式エフェクトレバー)も両機に搭載され、エフェクトのON/OFFを瞬時に切り替える“チョップ”操作が可能です。
スクラッチプレイでは、オープンフェーダー(エコーやゲートなど)を瞬間的にかけたり、トランスフォーマー的な効果を出すためにエフェクトの素早い切替が必要になる場面がありますが、パドル式なら指先で瞬発的にオン・オフできるため非常に重宝します。
REVシリーズ以外のモデル(FLX4や400/800)は一般的なボタン式エフェクトスイッチなので、この点でもスクラッチ向けの操作はREVシリーズが有利と言えるでしょう。

一方、DDJ-400、DDJ-SB3、DDJ-FLX4、DDJ-800は従来型のクラブ標準レイアウトです。
これはジョグが各デッキの中央に配置され、その下部にパフォーマンスパッド、横に縦長のピッチフェーダー、上部にエフェクトノブ類が並ぶスタイルです。
クラブDJに馴染み深い配置ではありますが、スクラッチ用途で見るとパッドがジョグより下に位置するため、スクラッチしながらホットキューを押す際に手の移動距離がやや長くなります。
またピッチフェーダーがジョグ横に縦置きされているため、ジョグを激しく操作したときに誤って手が当たるリスクもゼロではありません(※実際にはフェーダーに触れても音程がずれるだけですが、演奏中にズレると困るので注意は必要です)。
この点、バトルレイアウトのREVシリーズではピッチフェーダーが上部に退避しているため、スクラッチ時に干渉する心配はありません。
もっとも、エントリー機はピッチフェーダー自体が短いこともあり、よほど大胆に手を動かさない限り大きな問題にはならないでしょう。
それよりもレイアウト全体の作法として、ヒップホップ的なプレイに慣れたDJにはREVシリーズの配置がしっくりくるはずですし、オールジャンルDJには従来配置の方が安心感があるはずです。
実際、DDJ-REV1とFLX4を比較したレビューでも「スクラッチ志向ならREV1、配信やスマート機能重視ならFLX4」とユーザー層の違いが明確に述べられています。
これはレイアウト思想の違いにも通じており、スクラッチ特化設計のREVシリーズか、汎用設計の他シリーズかでスタイル適応が異なるのです。

加えて、クロスフェーダーの性能も触れておきます。
スクラッチではクロスフェーダーを酷使するため、その滑らかさや耐久性が重要です。
REV7はプロ仕様ミキサー同等のMagvel Fader Proを搭載し、耐久性・切れ味とも最高クラスです。
DDJ-800もMagvel Fader(初代)を採用しており、軽いタッチで高速なカットイン/アウトが可能です。
REV1や400/SB3、FLX4はそこまで高級なフェーダーではありませんが、いずれもカーブ調整機能を持ち、エントリー機なりにスムーズな操作感を実現しています。
特に400とREV1はクロスフェーダーがかなり軽く動く印象で、初心者でも扱いやすいでしょう(※耐久面では過度な負荷には注意ですが、交換パーツも手に入りやすい価格帯です)。
以上のように、レイアウトやフェーダーといったスタイル面では、スクラッチ専念ならREVシリーズがベストマッチですが、他のモデルでも慣れれば十分対応可能です。
普段練習するスタイルや将来の志向(例:ターンテーブル移行の有無)に応じて、自分に合った配置のモデルを選ぶと良いでしょう。

ユーザー評価・レビューから見るジョグ性能

最後に、実際のユーザーの声や専門家のレビューから各モデルのジョグ性能に関する評価をまとめます。
購入者の口コミは機材選びの貴重な参考情報です。

DDJ-REV1の評価

多くのユーザーが「コストパフォーマンスが抜群」である点を挙げています。
実売4万円弱という価格でバトルレイアウトと大型ジョグを備え、初心者でもスクラッチ練習に打ち込める点が好評です。
「Feels just like a mini battle setup.(まるで小さなバトルセットだ)」とその完成度を讃える海外レビューもあり、エントリー機ながら操作感は本格的との声が多数です。
ジョグの滑り具合が良く、スクラッチに最適」といった評価が目立つ一方、「筐体が軽くプラスチック感が強い」「出力端子がRCAのみでクラブ接続には工夫が必要」といった弱点も指摘されています。
総じて、「初心者がヒップホップ/スクラッチを練習したいなら最有力」との評価に落ち着いています。

DDJ-REV7の評価

プロ/上級者から圧倒的な支持を受けています。
最大の特徴であるモーター駆動ジョグについて「アナログターンテーブルと変わらない操作感。別次元の体験」「スクラッチの安定感が桁違い」といった絶賛が相次ぎ、「高価だが値段以上の価値がある」と評価されています。
内蔵ディスプレイや高耐久のMagvel Fader Proも好評で、「これ一台でバトルDJセットが完結する」「スクラッチDJにとって新たなスタンダード」との呼び声も高いです。
反面、「重量があり過ぎて持ち運びが大変(約10.7kg)」「価格が高い」といった現実的な難点も挙げられます。
しかしそれらを踏まえても「本気でスクラッチを極めたいなら最良の選択肢」との評価が大勢を占めています。

DDJ-SB3の評価

初心者からの人気が高く、「手頃な価格で基本を網羅」「軽くて持ち運びやすい」といったポジティブな意見が多数です。
ジョグに関しては「エントリー機ながら意外としっかりしたジョグで驚いた」「アルミトップで安っぽさがない」と評価され、8万円台の上位機(例:DDJ-SX3)と同サイズのジョグを採用している点も評価材料になっています。
Pad Scratch機能は初心者から「遊び感覚でスクラッチ練習できて面白い」と好評でした。
ただ、中級者以上になると「やはりジョグ径の小ささ・安定感の無さが気になる」「スクラッチ練習用としては踏み台」という声も出てきます。
総じて「DJ入門用として必要十分だが、本格的にやるなら次のステップへ」と位置づけられることが多いようです。

DDJ-400の評価

rekordboxユーザーの入門機としてロングセラーとなり、「使いやすいレイアウトで初心者に優しい」「コンパクトでデスク上でも扱いやすい」と評価されています。
ジョグについても「小さいが滑らか」「レスポンス良好で練習には十分」との声が見られ、初めてのスクラッチ練習機材として支持されています。
一方で「各パーツが小さいぶん本格的なスクラッチには物足りない場合がある」との指摘や、「プラスチック筐体でチープに感じる」という意見もわずかながらあります。
とはいえ価格面・機能面を考慮すればネガティブな評価は少なく、「初心者が自宅で練習するならベストバイ」との結論が多いようです。

DDJ-FLX4の評価

新しいエントリー機だけあって、「PCなしでもスマホで手軽にDJできる「配信が簡単に始められる」といった汎用性の高さが支持されています。
ジョグに関しては前述の通り評価が分かれ、「サイズが小さくスクラッチには向かない」という厳しめのレビューがある一方で、「前モデルよりジョグが重くなり多少スクラッチしやすくなった」との指摘もあります。
ただ全体的には「オールインワンの入門機」「とにかく軽くて持ち運び◎」といった点に注目が集まり、スクラッチ用途での評価は控えめです。
ユーザー層としても配信やモバイルDJ志向が多く、「スクラッチよりも手軽さ重視の人向け」との位置付けになっています。

DDJ-800の評価

中級機らしく総合力の高さが評価されています。
クラブ機材同等の操作子を装備し上級機に近いプレイ感」「外部入力対応で応用範囲が広い」といった肯定的なレビューが多く、ジョグについても「サイズが大きく操作しやすい」「フルカラーのジョグディスプレイが便利でDJがかなりやりやすい」と好評です。
Feeling Adjustノブによる抵抗調整も、「自分好みの重さにできるのが素晴らしい」と高評価を得ています。
一部「価格がやや高め」との声はありますが、機能に対する不満は少なく、「自宅練習から小規模現場までこれ一台で対応可能」「将来的な発展にも十分耐える」といった安定した評価です。
スクラッチ用途でも、ジョグの大きさ・精度・クロスフェーダー性能から見て「初心者~中級者が次のステップに進むのに最適なモデル」と位置づけられています。

以上、ユーザー評価を総合すると、ジョグ性能で高評価を得ているのはDDJ-REV7とDDJ-800、次いでDDJ-REV1という印象です。
REV7は価格と重量以外は概ね絶賛されており、800も中堅ながら上位機に迫る満足度を提供しています。
REV1はエントリー機としては異例の高評価で、「この価格帯でここまでできるのか!」と驚かれるケースが多いようです。
反対にFLX4やSB3/400は「入門用として優秀だが、スクラッチ性能自体は上位に譲る」という評価が目立ちました。

どのジョグがスクラッチに最適か?

全ての比較ポイントを踏まえると、現時点でスクラッチ用途に最適なDDJシリーズのジョグはどれか――結論から言えば、本格的にスクラッチ技術を追求するなら「DDJ-REV7」が頭一つ抜けています。
7インチ・モーター駆動の大型ジョグがもたらす操作感は群を抜いており、実際に触れたユーザーやプロDJからも「別次元」「新たなスタンダード」と評価されています。
ジョグ重量やトルクを自分好みに調整できる柔軟性も唯一無二で、スクラッチ表現の幅を最大限に広げられるでしょう。
価格は高めですが、「スクラッチに妥協したくない」という上級者には最有力の選択肢です。

とはいえ、全員がREV7一択というわけではありません。
初心者~中級者の方で、まず手頃な環境でスクラッチ練習を始めたいという場合、「DDJ-REV1」が最適と言えます。
リーズナブルな価格でバトルレイアウトと大型ジョグを備え、スクラッチに必要な要素をしっかり満たしているからです。
まずはREV1で腕を磨き、将来ターンテーブルや上位機にステップアップしたい」というユーザー像にもピッタリ合致します。
実際、REV1ならSerato DJ Proへのアップグレードでより高度な練習も可能ですし、サイズもコンパクトで自宅練習に向いています。

一方、rekordboxユーザーで将来的にクラブ機材に近い環境で練習したい場合は、「DDJ-800」がおすすめです。
ジョグの大きさ・フィーリング調整機能・頑丈さに優れ、クラブ標準に近い操作感を自宅で得られます。
800ならスクラッチ練習だけでなくオールジャンルDJプレイにも対応でき、現場志向のDJにとって汎用性の高さが魅力です。

そのほか、予算を抑えつつSerato環境でスクラッチをかじりたいなら中古市場も含めてDDJ-SB3(または後継のDDJ-REV1)が選択肢になりますし、とりあえずDJ入門としてスマホ対応機が欲しいならFLX4を選んで練習し、物足りなくなったら上位機に移行する手もあります。
重要なのは「自分が将来どんなスタイルでDJしたいか」を基準にモデルを選ぶことです。

最後に整理すると、

POINTスクラッチ性能最重視ならREV7
初心者の練習用ならREV1
中~上級の練習兼用機なら800が筆頭候補

その上で予算や使用ソフトの都合に合わせてSB3/400/FLX4といったモデルも検討してみてください。
どのモデルであっても練習次第でスクラッチの基本技は習得可能です。
ぜひ自分に合ったコントローラーを相棒に選び、楽しいスクラッチライフを送ってください!

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